■給与計算事務の流れ
従業員さんの大切な生活の原資となる給与は、どのように計算されるのでしょうか。
また、給与から差し引かれる社会保険料、雇用保険料、源泉所得税、住民税、財形貯蓄等は、何を根拠に算出されているのでしょうか。給与計算事務の流れを確認しておきましょう。
給与計算を簡単な算式て表すと以下のようになります。
給与総支給額−控除額=差引支給額 |
実際には、従業員さんが毎月受け取る給与明細書の項目の順に給与計算は進められます。
【給与計算のながれ】
@ 給与総支給額の計算 |
A 社会保険料の計算・控除 |
B 源泉所得税の計算・控除 |
C 住民税特別徴収税額の控除 |
D労使協定による控除額の控除 |
E 差引き支給額の計算・支給 |
CHECK POINT!
@上記のように給与計算は、固定項目と変動項目によって成り立っているので、事前に「マスター台帳」を作成し固定項目額を転記しておき、また変動項目は支給単価等を記入しておきましょう。
固定項目 |
変動項目 |
|
支給金額 | 基本給、職務手当、役職手当、住宅手当、家族手当、通勤手当など |
時間外手当、休日出勤手当、深夜手当、精皆勤手当、生算手当など 、 |
控除金額 | 健康保険料、厚生年金保険料、市町村民税、社宅・寮費、親睦会費、組合費など |
雇用保険料、所得税など |
@給与は固定項目の額や変動項目の支給基準がキチンと整理されていれば、給与計算はスムーズに行うことができます。マスター台帳は下記のような給与計算に必要な項目を従業員ごとにまとめたものです。
●基本給 ●固定手当額 ●変動手当単価 ●健康保険料 ●厚生年金保険料 ●固定控除額 ●扶養家族数 ●税額表の適用区分等
マスター台帳は給与計算の基本ですから、基本給や手当の変動、保険料の決定や改定のつど訂正し、常に最新の正しい情報に更新しておかなければなりません。この作業は怠ると正確な給与計算はできなくなります。
@通勤手当について
○通勤手当は他の諸手当と違って、一定金額〈100,000円〉までは所得税がかかりません。
○通勤手当は、社会保険料および雇用保険料の算定対象になります。
○通勤手当は、法律上、支給してもしなくても構いません。就業規則や給与規定で支給する旨や支給方法が定めてあれば、それに従います。
事業の種類 | 保険料率 | 事業主負担分 | 被保険者負担分 |
一般の事業 | 15.5/1000 | 9.5/1000 | 6/1000 |
農林水産 清酒製造の事業 |
17.5/1000 | 10.5/1000 | 7/1000 |
建設の事業 | 18.5/1000 | 11.5/1000 | 7/1000 |
A雇用保険の適用範囲が拡大されています(平成22年4月1日〜)
○31日以上の雇用の見込みがあること(6ヶ月以上)
○1週間の所定労働時間が20時間以上であること
A協会健保の健康保険料率は令和5年度は、3月にに改訂されますので、注意が必要です。。実務上は4月支給給与から徴収となります。厚生年金保険料率は.平成29年9月に183.00(折半負担)に固定されました。(http://www.mhlw.go.jp参照)以後、平成29年度まで毎年3.54/1000づつ引上げられ平成29年9月からは183.00で固定されることが決まっています。
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/h28/280203
B給与から差し引く所得税の額は、「社会保険料控除後の給与額」と「扶養親族等の数」に応じて、税額表(月額表あるいは日額表)を使用して求めます。
《扶養親族等の数》
従業員から提出されている「扶養控除申告書」をもとに以下のように求めます。
(ア)控除対象配偶者と扶養親族等の合計人数
(イ)本人が障害者、老年者、寡婦(寡夫)、又は勤労学生に該当するときは、その該当する数
(ウ)控除対象配偶者や扶養親族のうに、障害者または同居特別障害者に該当する人がいる場合は、その人数
設例− 本人が老年者で、控除対象配偶者と扶養親族が2人(うち1人は障害者)ある場合 |
控除対象配偶者プラス扶養家族2人・・・・・・・・・・・・・3人 |
本人が老年者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プラス1人 |
扶養家族の1人が障害者・・・・・・・・・・・・・・・・プラス1人 |
計5人を扶養親族の数とします |
《源泉徴収税額表》 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2009/01.htm
税額表には、月額表と日額表があり、給与の支払形態に応じて使い分けます。賞与については別に定める「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を原則使用します。
〈ア〉月額表と日額表の適用区分
種類 | 給与の形態 |
月額表 | @1ヶ月ごとに支払う給与 A半月ごと又は10日ごとに支払う給与 B月の整数倍ごとに支払う給与 |
日額表 | @日々支払う給与 A日割りで支払う給与 B月額表を使えない給与〈たとえば,週休の場合または臨時の人に20日分とか22日分のような給与をまとめて支払うような場合〉 |
〈イ〉甲欄、乙欄、丙欄の適用区分
甲欄・・・・・・・・・「扶養控除申告書」を提出している人
乙欄・・・・・・・・・「扶養控除申告書」を提出していない人
丙欄・・・・・・・・・日雇賃金〈扶養控除申告書」は不要です。〉
「扶養控除申告書」は、扶養親族がない人でも提出してもらいます。提出がないと乙欄に高額な税額を支払うようになります。
C住民税〈市町村民税+都道府県民税〉
住民税は、社会保険料や所得税と違って、会社で計算する必要はありません。事業所が提出した「給与支払報告書」により市区町村が計算して5月末までに「市区町村民税・都道府県民税特別徴収税額通知書」として送付されますので、個人のマスター台帳に転記して、徴収します。年税額を12で割った金額を毎年6月から翌年5月まで1年間にわたって徴収します。100円未満の端数がある場合は、6月分に加算しますので、6月分と7月分以降では通常金額が違います。