- ◆「労働契約法」と就業規則の関係
平成20年3月1日から「労働契約法」が施行されています。
就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、個別労働紛争が増加しています。 この紛争の解決手段としては、裁判制度のほかに、平成13年から「個別労働紛争解決制度」が、平成18年から「労働審判制度」が施行されるなど、手続面での整備はすすんできました。
しかし、紛争解決のための労働契約についての民事的なルールを取り決めた法律はありませんでした。このような中で、平成19年12月に「労働契約法」が制定され、包括的・基本的ルールが明確になり、紛争の防止、個別労働関係の安定が期待されます。
《参照》 労働契約法
第6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、
労働者および使用者が合意することによって成立する。
第7条 労働者および使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている
就業規則を周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。
ただし、労働契約において、労働者および使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、
第12条に該当する場合を除き、この限りではない。
労働契約は、使用者と労働者が合意することによって成立し、その契約内容である労働条件も合意により決定するのが原則です(労契法6条)。しかしながら、わが国では労働者保護を趣旨とした就業規則作成義務(労基法89条)および就業規則の当該事業場における労働条件の最低基準効力(労契法12条)を背景に、現実の雇用社会においても、年功主義人事、新卒一括採用等の雇用慣行のもとに、あらかじめ労働条件を就業規則に定め、採用時にこれを提示して、包括同意を得て労働契約の内容とする手法がとられてきました。この就業規則と労働契約の関係を定めたのが労働契約法7条です。
したがって就業規則を作成・整備する使用者としては、まず、その就業規則の内容を合理的なものにすることが必要で、更に、それを周知することが大切です。就業規則による労働条件の(不利益)変更は可能か。
労働条件の内容は、契約当事者の合意により決定され、その変更も当事者の合意によることが必要です。つまり労働条件を不利益変更する場合には労働者の同意なしには行えないとするのが原則です(労契法8条、9条、10条)。
したがって、使用者が一方的に作成する就業規則による労働条件の不利益変更はできないのが原則です。しかしながら、判例は、「解雇権濫用法理」と表裏にある関係として、「就業規則による不利益変更の法理」を確立してきました。
これらの原則と、就業規則による労働契約内容の変更については、労働契約法8条ないし10条に明文化されましたので確認してください。不利益変更の合理性判断の7要素(秋北バス事件・第四銀行事件)
1.労働者が被る不利益の程度(内容・程度)
2.使用者側の変更の必要性の内容・程度
3.変更後の就業規則の内容自体の相当性
4.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
5.労働組合等との交渉の経緯
6.他の労働組合または従業員の対応
7.同種事項に関するわが国社会における一般的状況等
ただし、労契法10条但書により、「労働者および使用者が就業規則の変更によっては変更さ
れない労働条件として合意していた部分について」は除外するとしています。
つまり、判例の合理性判断のポイントは、就業規則変更に対する業務上の必要性の程度と、
その内容により労働者が受ける不利益の程度を比較衡量し、その変更内容に社会的相当性
があるか等を加味することにある。
◆就業規則の効果
以上のように、就業規則の内容の合理性が認められ周知されていれば、就業規則で定めた内容が労働条件になるという根拠が明確にされました。企業としては、その分就業規則を作成整備する作業の意義が明確になったということです。また、労働条件を変更する場合も、合理性と周知という前提のもとに、包括的・画一的に就業規則によって労働条件の変更が可能とされる根拠を与えられたということになります。その前提にたって就業規則作成の効果を述べれば以下のようになります。
《使用者側メリット》
◇労働条件や職場規律を統一的・画一的に定めることによって、合理的かつ効率的な労務管理を行うことができる。
◇労働者一人ひとりが職場ルールをよく理解することによって、職場の秩序を良好に保てるようになる。
◇不要な紛争を予防し、より良い労使関係を築くことができる。
◇労使間で安定した信頼関係を築くことによって、活力ある職場を作り、能率の向上が期待できる。
《労働者側メリット》
◇労働条件や職場規律の明確な周知により、労使関係が安定し、安心して働くことができる。
◇明確にされた職場ルールを守ることにより、使用者からの恣意的な制裁を回避できる。
◇労働者自身の権利が守られ、生活設計が立てやすくなる。◆当事務所の就業規則作成手順
訪問・ヒヤリングを何度も繰り返し、納得がゆくまで詰めていきます。@ 基本方針の策定・・・・■業種・業態によって、また個々の企業によって労務管理の中 味が微妙に異なります。
あくまで自社の管理運営の実態に即したプログラムを策定し
ます。A 現状把握と改善点の洗い出し・・・・■管理運営の実態を把握し、問題点や改善点を
洗い出します。
■とくに労務トラブルの多い項目を洗い出し、改善
点を検討します
■変更・追加事項の検討B 労働法規との照合・・・・■現状の労務管理の実態や労務慣行に労働基準法などの労 働法規に違反している項目がないかチェックします。
C 記載事項の決定・条文化の決定・・・・■上記検討を重ねた結果、記載事項決定、条
文化する。とりわけ労務トラブルの多い事項
は重点的・広角的に規定しておく。D 労働者代表の意見聴取・・・・■代表社員を適正に選任し、意見書を求めます。
E 労働基準監督署への届出・・・・■最終チェックのうえ、原本と写し2部を提出します。
F 労働者への周知・・・・■常時社員さんが閲覧可能な状態にして、周知広報します。
G 運用開始・・・・■メンテナンス対応に徹します。
労働者と事業主間の労務のトラブルが増加しています。原因は、別掲で示していますが、就業規則の不整備も大きな原因となっています。何年も前の規程をそのまま改定を加えず放置してあったり、市販の規程をそのまま代用したり、内容があいまいな規定のままになっていたりすることが見受けられます。いざ問題が生じたときにルールがあいまいではどうしようもありません。リスクを防ぎ、未然にトラブルを防止し、見渡しの良い職場ルールの改善が必要です。
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「知って役立つ労働法」
(平成30年4月更新)
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って役立つ労働法」を改訂しまし
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