会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2024/05/09
企業に求められる退職者の情報漏えい対策

先日、同業者が集まる会合で、商品開発に従事していた従業員がライバルの会社に転職したことで、機密情報の漏えいを心配しているという話を聞いた。当社も商品開発に従事する従業員がいることから、どのような情報漏えいの対策をしておくべきか、社労士に相談することにした。

 先日、同業者が集まる会合で、商品開発に従事していた従業員が競合他社に転職したことで、自社の情報を漏えいしている可能性があるという話を聞きました。当社でも商品開発に関わる情報は、当然、競合他社に知られたくない内容です。

 そうですね。会社にとっては極めて重要な情報ですね。

 この話を聞いて、当社も、今後、同じようなことが起きる可能性があります。会社は、どのように退職者の情報漏えいの対策をしていけばよいのでしょうか?

 一般的な対策としては、情報管理について規程を整備したり、誓約書の提出を求めたりして、会社の技術上・営業上の秘密(以下、「秘密情報」という)の漏えい防止対策を行うことが多いと思います。ただ、まずは、秘密情報を漏えいしないことを従業員に改めて伝えることが重要なのでしょうね。

 確かにそうですね。

 そのほかの対策として、情報を把握できる従業員の数を絞ることが考えられます。例えば、製造ラインを新設する場面で、設備の工夫や配置の仕方の工夫によって他社よりも優れているような場合、秘密情報の全体を把握できる人数を制限するとともに、秘密情報に接する従業員が秘密情報を持ち出しにくい対策を行ったりすることが挙げられます。

 確かに製造にかかわる従業員が、新設する製造ラインに関するすべての情報を、初めから知っておく必要はないですよね。

 そうですね。秘密情報を持ち出しにくくする対策としては、工場内にスマートフォンも含めたカメラ等の撮影ができる機器を持ち込むことを禁止したり、私物を持ち込む際は、透明バックに入れることを求めたりするといった方法が考えられます。

 できる対策はいろいろありますね。

 開発の中核者が退職するケースも考えられますが、このような場合は退職に伴う漏えいリスクを下げる対策が必要です。1つ目が、入社時・退職時だけでなく、開発プロジェクトが始まる場合は、開始時にも秘密保持の契約書を締結していくことが挙げられます。これに加え、秘密保持を徹底するため、競業避止義務契約を締結することも考えられます。

 競業避止義務契約ですか。

 開発の中核者が知っている情報が会社の生命線に関わるものであれば、競業避止義務契約を締結することも考えた方がよさそうですね。

 2つ目が、退職の申し出があった際の社内情報へのアクセス権の制限、退職時の入出カードの回収、アカウント削除などが考えられます。この点をルーズにしていると、情報漏えいがあったときの会社の責任にもなりかねません。

 なるほど、開発の情報などをできるだけ早く見られないようにすれば、情報漏えいリスクを下げることができますね。

 3つ目としては、働きやすい職場環境をつくって会社との信頼関係を保ち、秘密情報を持ち出して会社を困らせるという気持ちを起こさせないようにすることも重要ですね。

 そうですね。従業員が故意に情報を持ち出すことは絶対に避けたいところです。対策としてどこまで実施すべきか、社内で検討したいと思います。

>>次回に続く



 今回は退職者の情報漏えいについてとり上げましたが、転職者を受け入れる際も注意が必要です。特に競合他社の中核人材を受け入れる場合は、転職者が転職元との間で負っている秘密保持義務や競業避止義務といった義務の有無を確認すること、転職者の採用時には転職元の秘密情報を持ち込ませないようにすること、転職者の採用後もその業務内容等を定期的に管理することが、対策として考えられます。

■参考リンク
経済産業省「営業秘密〜営業秘密を守り活用する〜

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。



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